いっしょに描く未来図 ミライズム ∞ トーク
Miraism Talk
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〜「長崎スタジアムシティ」〜
スポーツをもっと身近に!
地域全体が賑わう!
この方にお話をうかがいました!
濵田真梨子さん
V・ファーレン長崎のサポーター。人とつながることが好きで、サッカーの試合や、試合後のサポーター同士の交流で、初めて会う人たちともワイワイと盛り上がることが楽しみ。プロバスケットボールクラブ「長崎ヴェルカ」のファンクラブにも入会している。
金原哲治さん
長崎市職員。今回のプロジェクトの行政の窓口担当。長崎市に初めてとなるプロスポーツチームの拠点となるスタジアムができることにワクワクしている。市民の1人として、どうすれば良いプロジェクトになるかを考えながら、市職員の立場で日々サポートをしている。
簑原一隆さん
株式会社ジャパネットサービスイノベーション、株式会社リージョナルクリエーション長崎と兼務。主にクルーズのオプショナルツアーの企画、および他県からの誘客、長崎からの旅行といった相互誘客の仕組みづくりを行なっている。さらに、広域周遊で何ができるのかを交通事業者と一緒に取り組んでいる。
柴田翔平さん
株式会社ジャパネットホールディングスのグループ会社、株式会社リージョナルクリエーション長崎所属。スタジアムシティプロジェクト全体の進捗管理を行なっている。東京での勤務を経て、2020年9月に、10年ぶりに故郷である長崎に戻り長崎スタジアムシティプロジェクトに携わっている。
交流人口を増やす長崎スタジアムシティプロジェクト
金原
2015年に三菱重工業長崎造船所幸町工場が移転するという話が出まして、長崎県と長崎市、三菱との間で、その跡地の利活用の話を始めたのがこのプロジェクトの始まりです。ご存知のように長崎は斜面地が多く、工場跡地のような平地はすごく貴重なんです。土地の使われ方は今後のまちづくりに大きく影響することから慎重に検討しました。
今の長崎に足りないものを考えた時、人口減少を大きな背景として、若い人が楽しめる仕組みづくりや雇用の場の創出が必要ではないかと考えたんです。これらを将来的な跡地活用のビジョンとして掲げ、公募を行ったところさまざまなプランが提案されましたが、その中でジャパネットグループの内容が、私たちが考えるビジョンと一番マッチし、現在、プロジェクトに市も携わらせていただいています。
柴田
ジャパネットグループでは2019年から通信販売事業に並ぶ2つ目の柱として、スポーツ地域創生を掲げ、「感動とビジネスを両立する」ことを目指しています。
サッカースタジアムを民間がつくるという例は、これまで日本に無く、今回が初めての試みです。民間が地域創生事業を行うことは、収益が成り立たないという理由から敬遠されていたんです。そこで、サッカースタジアムをはじめとした複合施設を作ることによって収益面の課題を解決し、ビジネスで地域創生事業ができるモデルケースになることを期待しています。
長崎を盛り上げるという意義ももちろんですが、それ以上に、人口減少、雇用減少といった日本全体の課題に対して、「ジャパネットがうまくいったんだったら、うちもやってみよう」と、他の会社も地域創生に取り組むことで日本全体の活性化にもつながればと考えています。
簑原
このプロジェクトを成功させるキーワードは「交流人口を増やす」ことだと思います。
ジャパネットグループは、クルーズ事業も行っておりますが、そこではお客様が寄港することで大きな経済効果が生まれるという実証データもあるんですね。例えば、有名なミュージシャンがコンサートをしたとして、全国からお客さまが集まり、そこで宿泊や飲食を楽しんだりすることを想像するとわかりやすいかもしれません。
そして、ジャパネットグループには、もう1つサッカーという強みがあり、スタジアム構想はクルーズ事業から形を変えて交流人口を増やそうという取り組みになります。そこにはサッカーだけではなくて、イベントなどもそうですし、ホテルや商業施設も軸になって、交流人口を増やすことで活性化につなげようという思いがあります。
濵田
交流といえば、サポーターの交流は本当に楽しくて、点が入ると知らない人ともハイタッチするくらい、すぐに仲良くなれるイメージがあります。みんなでワイワイ盛り上がれる空間なんですね。サッカーの試合がある日は「またあの空気が味わえるんだ」って、行く前からワクワクしています。
簑原
長崎市の取り組みの中で、交流人口・関係人口の拡大という言葉を使っていますが、それは「長崎に関わりを持つ人を増やしていこう」と、それが「まちの活性化につながるのではないか」という考え方です。まさに長崎スタジアムシティプロジェクトは、まちの活性化につながる取り組みだと思っていますが、そのためには特に濵田さんがおっしゃったように、「楽しい」という感情が大切なんだと思うんです。
例えば、職場で食事に行ったとしても仕事の話ばかりだとつまらないと思いませんか?それが、サッカーであったり、趣味の話であったりすると楽しくて、「また行きたいね」となると思うんです。私は、これが交流人口拡大につながると感じているんですね。
「楽しい」ものがなければ、話題も生まれてこないでしょうし、人とのつながりも生まれてこない。例えば職場で、ベテランと若手で一緒に食事に行く機会って少なくなってきていると思いますが、サッカーが話題としてあれば、「今日、試合があるからビールでも飲みに行こうか」と誘いやすくもなるんじゃないかと。その経験が楽しければ次につながって、多世代の交流が生まれると思います。
日常に新たなワクワクを
濵田
私も、上司との会話が増えたように思います。ホームで試合がある日は、「今日、試合があるとやろ。早よ帰らんばね」と声をかけてもらったりして、社内でもいろんな人を巻き込んで楽しいですよ。
長崎市にスタジアムができると、「一緒に観に行きませんか?」と、もっと巻き込めるんじゃないかと思います。生で観ると、テレビで観るのとは違って雰囲気を肌で感じられますし、きっと皆さんサッカー観戦が好きになると思うんですけど。
柴田
客席からピッチまでの距離が日本一近いスタジアムにする予定なので、ベンチ付近でアップする選手たちが間近に見ることができ一体感も生まれますし、迫力のあるゲームを楽しんでもらえると思いますよ。
他にも、立って料理をつまみながら観戦できるVIPボックスだったり、さまざまな観戦スタイルを考えています。コンコースからスタジアムの中が見渡せるので、試合は観なくても良いから雰囲気に浸りながらビールを飲みたいという人も大歓迎です。ここに来れば楽しいといった場所にしたいと考えています。
そして、仕事帰りにふらっと立ち寄ってもらえるような場所になると嬉しいですね。仕事のことは一旦置いて、みんなで、知らない人とも一緒にワイワイできる環境で、たくさんの交流が生まれていくようなスタジアムを目指しています。
濵田
アクセスもいいから行きやすいですよね。長崎市内に住んでいる私にとっては、路面電車1本で行けるスタジアムはありがたいです。
柴田
長崎初上陸の店舗、長崎発の商品など、「長崎を生きる楽しさ」を発信できるような商業施設もできますので、ショッピングなども楽しめますよ。
金原
スタジアムに併設される商業施設に関しては、既存の商業施設のライバルになるのではなく、できるだけ共存・共栄できるような施設となるよう話をさせてもらっています。
柴田
商業施設では消費のキャパシティ全体を増やすように意識しています。モノの消費だけではなく、例えばアミューズメント施設を入れるなどしてコトの消費も考えることで、まちに人を呼び戻すことを既存の商業施設と一緒になって取り組むことができるんじゃないかと考えているんです。
簑原
地元の住民のかたに長崎スタジアムシティプロジェクトの概要説明会を開催しています。「見に行きたいよね」とか、「日常使いでどういったことができるの?」といった声が多く、期待されていることを感じましたね。
試合がない日も使い方イロイロ
濵田
日常使いのことは考えていませんでしたね。サッカーの試合がない日のスタジアムはどうなるんですか?
柴田
サッカーのホームゲームは年間20試合程度ですから、約340日は使われないスタジアムになりますよね。「収益が成り立たない」理由はまさにそこにあって、試合がない日でもここに来ていただけるような仕組みをつくっていきたいんです。
商業施設もその一つですし、スタジアムとは別にアリーナも併設予定です。アリーナではイベントやコンサートなども開催できますし、ジャパネットグループは2020年にB3リーグの参入を目指しプロバスケットボールクラブ「長崎ヴェルカ」を立ち上げましたので、Bリーグの試合も観戦することができます。
金原
芝生を楽しむだけでもいいですよね。試合がない日はスタンドを解放してもらって、広い空間を眺めながら、ボーッとなんにもしない時間を過ごすことって滅多にできることじゃないですから。
長崎市としては、なるべく解放するスペースをつくってもらって、色々な人たちが色々な使い方を自分たちで考えられるような施設になるよう話をさせてもらっています。
柴田
まだ計画段階なので、確実なことは言えませんが、スタジアムビューを生かした取り組みを考えています。ホテルも併設しますが、スタジアムが見えるホテルは日本で初めてなので、眺め自体を楽しんでもらうとか。他にもスタジアムの両サイドにワイヤーロープを張り、滑車を使ってピッチの上空を渡るアトラクションも構想中です。
簑原
雨の日でもウオーキングができる散歩コースをつくったり、遊具を設置して子どもたちに遊んでもらったり。自由な使い方で言えば、マルシェなども開催できる広場を設置するなど、皆さんの憩いの場としても活用いただければと思います。
何より、スタジアムやアリーナで、サッカーやバスケットボールといったプロスポーツをこれだけ身近に、間近に体験することはあまりないと思うので、子どもたちは夢も持つだろうし、世界へ羽ばたくきっかけにもなるんじゃないでしょうか。長崎スタジアムシティプロジェクトは、今のにぎわいの創出ももちろんですが、将来に向けても子どもたちの育成にも力を発揮できるのではないかと期待しています。
地域の活性化の根っこになる長崎スタジアムシティプロジェクト
金原
そのようなイベントの企画、運営もそうですし、スタジアム自体の運営もあります。商業施設の他、オフィスも一緒に誘致するよう準備を進められているとのことなので、雇用の創出効果も期待しているところです。
柴田
オフィスに関しては、働きやすいオフィスを目指しており、コワーキングスペースと企業が入る賃貸オフィスが共存できるようなオフィスビルで、縁側のようなスペースを設け、日光を取り込む環境をつくれないかなど検討しております。スタジアムに隣接して、働く場所として良い環境というのが付加価値となって、長崎の企業だけではなくて、これまで長崎になかった企業の誘致にもつながればと考えています。
簑原
あとは地域への波及効果ですね。交流が生まれ、スタジアムやオフィスの来場者、来館者が増えることで、公共交通機関や、飲食も、利用者の増加が期待できると思います。
濵田
確かに、以前知り合った浦和レッズのサポーターが言っていたんですが、レッズのサポータって「アウェイでは、できるだけそこで飲食等をしてお金を落とす」ことがポリシーなんだそうです。他にも、「明日はグラバー園に行く」と話されていたアウェイのサポーターご夫婦もいらっしゃいました。こういった意識も地域の活性化につながっていくんでしょうね。
長崎には観光や食などいろんな良いところがたくさんあって、しかもコンパクトなまちだから、どこにでも行きやすいのが魅力ですよね。まちの真ん中にスタジアムができると、そんな良いところともっとつながれて盛り上がるんじゃないかと思います。
簑原
私も、選手と一緒に全国各地に行きますが、試合後は飲食店でユニホーム姿のお客様をよく見かけます。ホームとかアウェイとか関係なく、「一緒に飲もうよ」と距離が近くなり、つながりができるのはサッカーの魅力だと感じます。
また、そうしていろんなところに行って気づいたことは、サッカーは決して若い人だけが観るスポーツではなく、年配のかたのサポーターも多いということです。こういったかたは、宿泊をしたり、あるいは他の観光を楽しんだりするかたも多いと思うんですね。長崎ではこれからいろんなイベントができると思っていますので、周遊等につなげられればもっと交流が広がるのではないでしょうか。
濵田
個人的には、試合後にお酒を飲むこともすごく楽しみなんです。スタジアムができる幸町周辺だと、浜口町にたくさんお店があると思いますが、今はなかなか行く機会がありません。でも、スタジアムができると「行ってみよう」となると思いますし、行動範囲も広がるんじゃないかと期待しています。
試合はもちろんそうですが、周辺の地域のお店にも行って楽しみたいですね。
金原
本当に、それぞれの地域には、まだ知られていない良いお店がたくさんあるんですよ。人と人との交流ももちろんですが、人と地域との交流が生まれることも活性化につながるでしょう。
そんな、楽しさも、雇用も、交流も生む長崎スタジアムシティプロジェクトは、まさに地域を活性化させるプロジェクトなんです。
そして、長崎市にサッカースタジアムがあるということが、日本全国へ向けての大きな発信力となって、長崎に訪れてくれる人が増えることにつながる。人の流れが生まれることで、そこからさらに楽しさや夢が広がっていくんだろうと思います。
長崎には人を受け入れていくような土壌があると感じていますし、外の人たちを受け入れる、いい意味でのおせっかい的な気質があります。それを、「なんか長崎ってあったかいよね」と、長崎の魅力として感じてもらえるような雰囲気を市民一人ひとりがつくっていければ、賑わいのあるまちづくりを実現できると信じています。
取材日/2021年2月16日
※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです。またソーシャルディスタンスに十分配慮した上で行なっています。